空中測量研究室の技術ノート【2冊目】

山口大学の1研究室による研究メモです。UAV写真測量, ドローン測量, フォトグラメトリ, SfM/MVSなどと呼ばれる技術の情報があります。

【研究メモ230427】Metashapeのバンドル調整での「追加の補正を調整」(Fit additional corrections)オプションとは

 

Metashapeでバンドル調整を行うためのダイアログ「カメラアラインメントを最適化」(旧「カメラを最適化」;英語ではOptimize Cameras)には、バージョン1.6.0で、「追加の補正を調整」(Fit additional corrections)というチェックボックスが実装されました。

 

Metashape 1.8.4の「カメラアラインメントを最適化」ダイアログ

その趣旨についてはこちらの記事で触れていましたが、ブラックボックスなのでその後2年以上、研究には用いていませんでした。

おそらく、高次の接線方向歪みのパラメータp3, p4をまとめたもの+αなのかなと想像していたところですが、どうも違うようだということが、今回判りました。

このオプションをONにした状態でバンドル調整を実施し、「カメラキャリブレーション」ダイアログから内部パラメータをxmlファイルにエクスポートすると、xmlファイルに

<corrections type="fourier">

というセクションが追加され、そこにたくさんの数字が並びます。fourierという文字列、そしてこのセクションの中身から、p3やp4ではなくフーリエ係数に見えます。

私の予想では、f, cx, k1, p1などの既存の他の内部パラメータをあてはめた(再投影誤差のRMSが最小になるように最適化した)ときの残差、つまり他の内部パラメータで説明しきれない再投影誤差)を、画像全体を1周期とみなしてフーリエ級数展開したときの、フーリエ係数を格納しているのではないかと思います。

内部パラメータをエクスポートしたXMLファイルの例

他の内部パラメータを係数とする「Brownのカメラモデル」は物理的な(光学的な)モデルであり、「画像保存時の前処理で歪み補正されてしまった画像」には上手くあてはまらない懸念がありますが (James et al., 2020)、

もし上記の解釈通り、「追加の補正」に使われるモデルがフーリエ級数展開ならば物理的なモデルではありませんので、「画像保存時の前処理で歪み補正されてしまった画像」にも特に問題なく適用できると考えられます。そのような画像を使うMetashapeプロジェクトでは、k1, k2, k3やp1, p2などは敢えて推定せず(アラインメント前から0に固定し、その後「カメラアラインメントを最適化」ダイアログでもチェックを外したままにしておき)、「追加の補正」だけにする方がよい場合もあり得るかと思います。

 

James, M. R., Antoniazza, G., Robson, S., and Lane, S. N. (2020) Mitigating systematic error in topographic models for geomorphic change detection: accuracy, precision and considerations beyond off-nadir imagery. Earth Surf. Process. Landforms, 45: 2251– 2271. https://doi.org/10.1002/esp.4878.