UAV写真測量の勉強を始めたときから気になっていた基礎的なテーマを検討した、新しい論文の紹介です。本質的にはUAVやSfM/MVSを使う場合に限られる話ではなく、航空写真測量の分野でビートルズの時代に論文が出ていてもおかしくないテーマなのですが、どうしても直接対応する文献が見つからず、自分たちで検討することになりました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejcei/78/1/78_35/_article/-char/ja/
なお、個人的には今回初めて土木学会論文集(学会発表と連動していない方)に投稿しました。「土木情報学」という広い分野を対象にした論文集でしたが、専門的で大変丁寧な査読をいただきました。
要旨
UAV写真測量の難点として,精度の事前予測が難しいことが挙げられる.本研究ではこれを補う取り組みの事始めとして,UAV写真測量における3次元点群や検証点の座標推定精度(推定値の分散すなわちばらつきの小ささ)について,単純な状況における上限の目安を与える理論式を新たに導き,その性質を論じるとともに数値例を示した.これらの式は,画素数・焦点距離・対地高度・隣接画像重複率などの撮影の設計変数に基づき,点群・検証点の座標推定の本質である多視点三角測量に関する水平・鉛直方向の分散を評価するものである.現時点では非常に単純な状況を対象としているが,このような式は,撮影・解析計画が要求精度に照らして,少なくとも成功の見込みの全くないものではないことを,簡易的に事前判断する際の参考となることが期待される.
書誌情報
神野 有生, 油谷 大樹, UAV写真測量の上限精度の目安としての多視点三角測量の分散評価式, 土木学会論文集F3(土木情報学), 78巻, 1号, pp.35-42, 2022.